市田医師の原著論文とletter論文がWJGとJGに掲載されました。
徳洲会メディカルデータベースを用い、内視鏡止血(EVL)に成功した食道静脈瘤破裂患者に対する予防的抗菌薬投与の有効性を検証した原著論文がWorld Journal of Gastroenterology(IF 4.3)にpublishされました。https://www.wjgnet.com/1007-9327/full/v30/i3/238.htm
・肝硬変を有する上部出血患者に対する予防的抗菌薬有用性を検証した論文に対しするLetter論文がJournal of Gastroenterology (IF6.3)からonline出版されました。https://link.springer.com/article/10.1007/s00535-023-02066-8
原著論文の内容と工夫:
・内視鏡止血後の食道静脈瘤破裂患者への予防的抗菌薬投与は、近年のエビデンスが不足しているにも関わらず、世界中で広く行われ、欧米ではガイドライン推奨度も高い状況です。
・多剤耐性菌の増加を背景に、不必要な抗菌薬の使用は避けるべきであり、これに関する明確なエビデンスの構築が急務となっています。
・DPCデータに加え、採血・バイタルサイン結果や各電子カルテに遡ることで詳細なデータも取得できる徳洲会メディカルデータベースから、13年46施設の食道静脈瘤破裂に対しEVL止血を行ったデータ(n=980)を用い、過去最大規模の研究を行いました。(このデータベースの特徴を利用し適切に予防投与患者を抽出し、正確なアウトカム評価ができました)。
・欠測値に対しては多重代入法を用い、アウトカム評価はIPTW(逆確率重み付け)を用いて解析を行いました。
・本研究により、EVL止血に成功した食道静脈瘤破裂全患者に対する予防的抗菌薬投与の明らかな有効性は確認できず、世界的な診療ガイドラインの見直しの必要性が示唆されました。
Letter論文:
他施設よりリアルワールド社の大規模データベースを利用した肝硬変の上部消出血患者に対する抗菌薬予防投与は不要であることを示した論文がJornal of Gastroenterology(JG)からpublishされました。この研究へのデザイン・解析に対するletter論文もJGより2023年12月にonline publishされています。
これら2つの日本の大規模データベースから食道静脈瘤の止血後に全例への抗菌薬予防投与は不要であることが示されました。今後ランダム化比較試験の必要性はありますが、現在の世界的なプラクティスを見直す重要な研究となると思います。
これらの成果は徳洲会スタッフが、日夜断らない医療に真摯に向き合ってきた結果です。
今後も臨床医として1人1人と向き合いつつ、消化器疾患に苦しむ方々により適切な医療を提供できるよう臨床研究にも取り組んでいきます。